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ジャコメッティ展 [展覧会(陶芸・デザイン等)]

展覧会の会期が終わりに近づくにつれ、行った人がふえ、「ジャコメッティ展、よかった」
という声があちこちから聞こえる。行かなくちゃ、で、友達と出かけた。

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ジャコメッティの作品を知ったのはいつだったのだろう?
高校生の時、「ほら、あの細長ーいジャコメッティの彫刻みたいな人」と、今は亡きE子が
言い、笑ったりしたのを思い出す。そして実物を初めて見たのは、箱根の彫刻の森で、だった。
一昨年、倉敷の大原美術館でも小さめの細い女性像を見たが、今回のようにまとめて
たくさん見れる機会はなかなかない。


2015年にジャコメッティの「指さす男」(個人蔵)が、クリスティーズで170億円という彫刻で
過去最高の値段がついて話題になった。「指さす男」は、ニューヨークのMOMA(近代美術館)にもある。

今回は展示のしかたが良く、楽しんで見れる。
回顧展なので、ほぼ年代順の並び。18才、彫刻に取り組む前の作品「ディエゴの肖像」という絵
から始まるが上手い。このまま画家でもいけるのでは、と思えた。
アルベルト・ジャコメッティ(1901~1966)はスイスの山合いの村の生まれ。父はジョバンニは
名の知れた画家だった。1才下の弟ディエゴも彫刻家で家具製作者。
18才で彫刻を志したジャコメッティは、パリに出て、ブールデルに学ぶが、師のように写実的な
彫刻でなく、キュビズム的な作品に取り組んだ。ピカソ、ミロ、バルテュスらと交友があり、
アフリカの原始彫刻にも興味を持った。
女=スプーン(1927年) ブロンズ

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その後、シュルレアリズムから離れ、写実的な5センチほどの小さい彫刻に専心していく。
余分なものをそぎ落とした結果の形である。肉づけのない細い人物というジャコメッティの
原型がここにある。
追記)
ジャコメッティは画家の父から「見たように、あるがままに描け」と教わった。ところが、
ジャコメッティがそこに置いた梨を描くと、どんどん小さくなってしまう。これは悩みだった。
「見たものを記憶によって作ろうとすると、怖ろしいことに、彫刻は次第に小さくなった。それらは
小さくなければ現実に似ないのだった」と、ジャコメッティ自身が後に語っている。

1946年に15才年下のアムネットと結婚。その後、彫刻は、どんどん大きくなったが、横幅は
そのままで背が高くなっていった。

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「これ、面白い!からす天狗」と目を留めたのは、下の写真。これは大きくない。
「鼻」1947年 ブロンズ


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ひとつの台座に複数の人物を配した群像もテーマのひとつになった。
「林間の空地、広場、9人の人物」1950年 ブロンズ
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こういった林立像の中で、私が好きだったのは、「3人の男のグループ(3人の歩く男たち)」
パリの街角で歩く人たちをスケッチ。すれ違いながら、それぞれ、各自の目的地に向かって
歩く人たちのようすをスケッチすることで、作られた3人の像。
3人は一緒の台座にいるけれど、お互い見知らぬ人、それぞれの方向に歩む。疎外感を
象徴するような現代を暗示する作品に見えた。(写真なし)

ジャコメッティは制作に時間がかかったので、モデルは忍耐力が要され大変だった。
哲学者、矢内原伊作は丁度パリに留学中だったので、幾度もジャコメッティのモデルを務めた。
東洋的な顔立ちの矢内原にジャコメッティは興味を持ったのだが、矢内原が誰よりも自分の
制作に理解、協力をしてくれたのがうれしかったようだ。矢内原コーナーもあり、私には、
矢内原が特別に東洋人っぽい顔立ちには見えなかったが、外国人の目には違うのだろう。
矢内原がジャコメッティからもらったジャコメッティが10歳の時に模写した北斎作品も展示
されていた。(神奈川県立美術館蔵)

弟ディエゴが一番長くのモデルをつとめた。ディエゴは動物の彫刻を制作し、東京の松岡美術館
ロビーに「猫の給仕頭」というとてもキュートな作品がある。ジャコメッティも犬、猫の作品を制作
したが、写実的なものではなく、痩せたジャコメッティスタイルである。
「犬」1951年 ブロンズ 
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「ディエゴの胸像」1954年 ブロンズ 

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ジャコメッティは画家の父からて手ほどきを受けているので、デッサンが非常に上手い。
リトグラフも何枚か展示されていた。下の室内の絵には、左側に作品「歩く男」が見える。

「犬、猫、絵画」1954 リトグラフ 
giadessan.jpg

1962年に、ジャコメッティはヴェネツィア・ヴィエンナーレの彫刻部門でグランプリを受賞。
世界中に名が知れわたった。

今回の展示の最後の大きな部屋には、彫刻が3つ。
撮影可能になっている。小さな彫刻が展示してある手前の部屋から、窓越しに大きな彫刻が
見えるようになっている展示のしかたがいいな!と思った。


gia33.jpg


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左側が、今回のチラシやポスターに使われた「歩く男」 である。
洗練されていて、とても良い展覧会だった。

 追記: 熱海・MOA美術館の「アフリカの美」という企画展で、ジャコメッティの「女性立像」を見たことがありました。→ ここをクリック

       アフリカの細長い人物像彫刻と並べての展示。これを見ると細長くなったのは、アフリカ彫刻を見た印象が
       頭の片隅にあったから、なのでは?と思われます。


nice!(35)  コメント(10) 
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コメント 10

アールグレイ

ジャコメッティの作品、一度見たら印象に強く残りますね。
細さの中に強い意志を感じる作品たち。
デッサンも素敵です。
by アールグレイ (2017-09-02 13:52) 

coco030705

こんにちは。
ジャコメッティ展行かれましたね。いい展覧会でしたね。楽しかったです。犬と猫の彫刻も良かったと思います。無駄な部分をそぎ落としていくとこうなるんですね。誰にも似ていない作品ができたのがすばらしいことだと思います。
クロッキーや数点あった絵も好きです。そのうち記事に致します。
by coco030705 (2017-09-02 17:10) 

yk2

やっぱり、ジャコメッティから連想してごはんを決める・・・はムリ。どう見ても、美味しそうには見えないもの(苦笑)。

taekoせんせー、どうしてアルベルトがこんな様式、針金みたいに細長いフォルムを採用するに至ったのか、って解説はなかったのでしょうか?。
by yk2 (2017-09-06 00:48) 

moz

ジャコメッティはじぶんも学生の時に教科書かな? で初めて知りました。
魚の様に平べったくて、飴細工をぎゅーって引き延ばしたように長くて、インパクトが強く一目で覚えてしまいました。
実物はブリヂストンかな? それからはこの美術館に通ったこともあり、結構よくあっていました。
回顧展なんですね。年代別に辿れるって、理解するには一番いい並べ方かもしれません。
しばらく展覧会サボっていましたが、秋です ^^
秋にはと思い、前売り券を3種類そろえました。 笑
秋は絵を楽しみます。そして、コンサートも4つくらい揃えました ^^
by moz (2017-09-06 05:57) 

匁

細すぎてショックです。
ぅ~ん何かを感じるから芸術的なんですかねェ~?。

高齢者の自動車運転免許証の更新には認知機能検査と高齢者講習を受ける
必要が有ります。その内「枯齢者講習」も受講の必要が有るようになるかもわかりません。そうすると、一般の人の更新は1回の出頭?で済むのが
4回も出頭?することになるかも?。
by (2017-09-06 09:38) 

ナツパパ

ジャコメッティ展、行きたいなあ。
以前、ジャコメッティという本を読んで以来、見たいんです。
独特の雰囲気を持った彫像ですね。
by ナツパパ (2017-09-06 15:18) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。
▲アールグレイさん、人物がこんな細くて長い彫刻は、他にないので、印象に残りますね。余分なものがそぎ落されて芯だけが残り、強さがあるんでしょうね。
デッサンは、ちょっとビュッフェふうかなと思いました。

▲cocoさん、、「ジャコメッティ展、よかった」という声があちこちから、って、cocoさんも含まれてるんですよ。cocoさんが東京で見なくちゃの展覧会なのに、東京在の私が見逃してはいけないと、背中を押されて?出かけました。良かったです!
知ってるとか、いくつか見たことあるとかでも、回顧展となると、全貌が見れるので、また別の面白さがありました。
地味だから気づかなかったと思うけど、リトグラフで、「アレジア通り」っていうのが2点、私のパリの親友の家はアレジア通りなの。知ってる場所でちょっとうれしかったです。
by TaekoLovesParis (2017-09-06 21:23) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。
▲yk2さん、たしかにジャコメッティ作品からは、食べ物が浮かびませんね(笑)
アルベルトは彫刻を造るとき、余分なものをそぎ落として行った、そうしたら、こんなに細くなったんだそうです。(追記)で加えておきました。対象を見てるうちにどんどん小さくなるとか、どんどん大きくなるという感覚、距離感が変になるというのが、私は理解できなかったので書かなかったのです。yk2さん、わかりますか?

▲mozさん、一度見たら忘れないほど、ながーく引き伸ばされてますね。余分なものをそぎ落して、、哲学的なんだそうです。対象物のまわりにある余分なものを排除していって、ものの本質をつかもうとする態度が哲学的なんでしょうね。
mozさんへのおすすめは、弟ディエゴ・ジャコメッティの「猫の給仕頭」です。白金の「松岡美術館」のロビーで出迎えてくれますよ。姿、かたちが愛らしいだけでなく、誇りと威厳があるんです。単なる給仕でなく給仕頭ですからね。
展覧会に音楽会にと、いよいよ芸術の秋ですね。

▲匁さん、芸術から何かを感じてさらに刺激を受けるんでしょうね。
高齢者の事故が多いから、自動車運転免許証の更新に、いろいろなテストが加わるようになったんでしたっけ?そんなにいくつも検査があったら、面倒ですねー。
「枯齢者講習」、年とると枯れてくるからですか(笑)

▲ナツパパさん、<ジャコメッティという本を読んで以来> へぇ~、そういう本があるんですね。ジャコメッティは35才の時、20才の人と結婚するんです。かなり歳の差婚だけど、彼女にモデルをつとめてもらって、細長い「ヴェニスの女」が出来るんです。そういえば、伝記映画もあって、来年公開だそうです。
by TaekoLovesParis (2017-09-07 00:21) 

Inatimy

なんでこんなに細くなるんだろう、って、ずーっと不思議なままです^^;。
余分なもの・・・う〜ん・・・骨格だけは必要なのね。
小さい梨・・・果物は実や果肉が大事で余分なものじゃないのに、なんでだろう。
果物の本質って・・・と考え出すと余計に分からなくなってきますねぇ^^;。
by Inatimy (2017-09-07 07:11) 

TaekoLovesParis

Inatimyさん、私も「なんでこんなに細くなるんだろう」って、考えても、わからなくて、、。ジャコメッティにはモノが細く見えた、、それでは解決できない。何かきっかけがあったからではないか、って思ってました。そうしたら、最後に追記で書き足しましたが、アフリカの原始彫刻だったんですね。初めは彫刻を作っていたモディリアーニも、アフリカの影響で、長い顔だけの作品がいくつかありますものね。
by TaekoLovesParis (2017-09-09 13:24) 

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