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ゴッホ展 巡りゆく日本の夢 [展覧会(洋画)]

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過去にゴッホ展は何回もあったが、今回のは、ゴッホと日本。ゴッホがどんなに日本に憧れ、関心を
寄せていたかに的を絞ったもの。だから、チラシの絵が浮世絵の花魁(おいらん)の模写。
裏表紙は、「画家としての自画像」1887~1888年。
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1886年、ゴッホは暗いオランダから光を求めて弟テオが住むパリにやってきた。
当時のパリはジャポニスムに沸いていた。
ゴッホがパリで刺激を受けたものは、「印象派」と「浮世絵」である。
印象派の技法を学んだことで、暗い色彩が消え、明るい色調へと変化した。
画商ビングの屋根裏部屋で見た多数の浮世絵に感動し、模写をすることで、構図や色づかいを
習得しようとした。チラシに使われている「花魁(渓斉英泉による)」(ファン・ゴッホ美術館蔵)は
浮世絵の模写で、後期(11/28から)展示には、渓斉英泉の原画も展示されている。

1887年、ゴッホは、アゴスティーナの店で、「浮世絵展」を開催した。
「カフェ・ル・タンブランのアゴスティーナ・セガトーリ」(ゴッホ美術館蔵)
右側の壁に、女性の姿が描かれた浮世絵がかかっている。

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今回は、「参考図版」のみの出展の「タンギー爺さんの肖像」(ロダン美術館蔵)の背後には、びっしりと
浮世絵が描かれている。その浮世絵は、研究の結果、三枚とわかり、そのうちの2枚が展示されていた。
歌川広重「五十三次図会四十五石薬師 義経さくら範頼の祠」
歌川邦貞「三世岩井粂三郎の三浦屋の高尾」である。
これは、とても興味深かった。花魁の髪にささる大きなかんざしは、ゴッホの目に奇異に写ったと思うが。。


1888年、ゴッホは、日本に憧れて、日本に似ていると、南仏アルルに移った。
アルルに到着した日は雪、一面の銀世界だった。ゴッホは「雪の中での景色は、日本人の画家たちが
描いた冬景色のようだった」と弟テオへの手紙に書いている。

「雪景色」(個人蔵)
遠景にアルルの町並み、前景に茂みや板囲いを描き、中景の雪面を白い絵の具で浮き立たせている。
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これに対応していると思われる浮世絵、歌川広重「五十三次名所図会 沼津 足柄山不二雪晴」
なども展示されていた。


春には、「黄色とスミレ色の花が一面に咲いた野原の小さな町、まるで日本の夢のようだ」
とテオに書いている。スミレ色の花=紫色のアイリスが近景に広がる。
「アイリスの咲くアルル風景」(ファン・ゴッホ美術館)
地平線が半分より上、高い位置にあるのが、浮世絵の影響。
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「種まく人」(ファン・ゴッホ美術館)
ミレーの「種まく人」にならっているが、種まく人物以外は、ゴッホのオリジナル。
近景の木の幹を大きく描く方法は、広重の「江戸名所 亀戸梅屋敷」にならったと思われる。


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浮世絵の極端な遠近表現は、江戸時代に移入された西洋絵画の遠近法がもとになっている。
それが浮世絵を通して、ヨーロッパに広まったというのは、面白い。

「サント・マリーの海」(プーシキン美術館蔵)
ゴッホの海の絵は、珍しいと思う。

鳥瞰図的手法は、浮世絵由来のもの。波のうねりの表現が立体的で大胆。

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ゴッホは、「アルルの跳ね橋」を気に入り、エミール・ベルナール宛の手紙の中にスケッチを
添えている。それには色彩も記述されているが、現存するのは、その絵の一部分が、

「水平と恋人」というタイトルで展示されていた。


「タラスコンの乗合馬車」(プリンストン大学美術館蔵)
ゴッホっぽくない絵だけど、どこか惹かれた。
浮世絵からの影響は、顕著な輪郭線と白が効果的な平坦な色面に表されている。

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「夾竹桃と本のある静物」(メトロポリタン美術館蔵)
夾竹桃は、日本のイメージの花。

この絵が描かれた1888年8月には、「ひまわり」の初期の何枚かが描かれている。

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「寝室」(ファン・ゴッホ美術館蔵)は、前のゴッホ展にも来た絵なので再見。

ゴッホはますます日本に心頭していく。
ピエール・ロティ作の小説「お菊さん」を気に入り、それに影響を受けたと思われる作品
「ムスメの肖像」(プーシキン美術館蔵)では、ムスメ(少女)が手に夾竹桃の花を持っている


以上の作品に年代を記さなかったのは、どれもが1888年だからである。
1888年の12月、ゴッホは耳切り事件を起こし、コーギャンとの共同生活も終わった。
アルルの病院に入院した後、サン・レミの精神病院に移った。



「草むらの中の幹」1890年(クレラー・ミュラー美術館蔵)
穏やかな下草に対して、樹の皮の表現が装飾的で表現主義っぽい。時代の影響だろうか。

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「ポプラ林の中の二人」1890年(シンシナティ美術館蔵)
横長の画面は、浮世絵の影響だろう。幻想的な美しい絵。

白と黄色、明るい下草。列柱のような木々。手前から林の奥まで見通せるが、奥は黒に近い色。
ゴッホ、最後の作品。

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ゴッホは、武者小路実篤らの「白樺派」によって日本に紹介された。
1890年、ゴッホが亡くなった後、日本人の画家たちが、ゴッホの残された作品を見るために

ゴッホが晩年に交友を持った医師ガシェのもとを訪れた。彼らが名を記している「芳名帳」が
展示されていた。そこに「式場隆三郎」の名前を見つけ、精神科医としてゴッホの研究
をしたことを知った。佐伯祐三が描いた「オーヴェールの教会」の絵、前田寛治の「ゴッホの墓」の絵もあった。

ゴッホは日本に憧れた。何年か後に、今度は日本人がゴッホに憧れた。
ゴッホ人気は100年続いている。




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gillman

この都美のゴッホ展と西美のジャポニズム展で上野は今ジャポニズムつながりですね。ゴッホ展を見て日本人のゴッホ好きは年季が入っているなぁと思いました。とても興味深く観ました。
by gillman (2017-12-18 11:46) 

アールグレイ

ゴッホ展、九州には来ないのかしら。
素敵な絵ばかり。
日本人として、日本の浮世絵など影響強くその作品に出ていると
何だか嬉しくなります。
改めてゴッホの作品から日本の良さを認識する感じとでもいうのでしょうか。
色彩といいタッチの優しい絵も、良いですね^^
by アールグレイ (2017-12-18 22:38) 

Inatimy

ゴッホが模写した原画が見られるっていうのにはすごく惹かれますね。
日本でゴッホの展覧会が開催されてると知って、実はファン・ゴッホ美術館へ行くのを
控えてます^^;。 きっと貸し出し中が多いだろうから。
海の絵はファン・ゴッホ美術館にもあるんですよ。 同じサント・マリーの海だけど、
船の数が少ない絵で『サント=マリー=ド=ラ=メールの海の風景』。
それは、船以外を海辺で描いたんですって。キャンバスに塗られた絵の具に砂粒が
混じってるのが見つかったそうな。
プーシキン美術館所蔵の海の絵にも砂粒が含まれてるかもしれませんね〜。
by Inatimy (2017-12-19 07:39) 

coco030705

こんばんは。
この記事にアップして下さっている絵はどれもすばらしいですね。私は4枚目の雪景色にとても惹かれました。日本的だからかもしれませんね。
他の絵もどれも魅力的ですね。Eテレの日曜美術館を観ていたら、生前ゴッホの絵で売れたのは一枚だけだったとか。信じられませんね~~!時代がゴッホに追いついていなかったということでしょうか。
来年、関西に巡回しますので楽しみにしております。

by coco030705 (2017-12-20 22:48) 

moz

ぼくも今年の〆に先日展覧会に行ってきました。
ゴッホってこんなに日本にあこがれていて、模写までしていたんだと知り、とても興味深く見てくることができました。
ちょうど原田マハさんの本も読んでいたのでよけいです。 ^^
最後の絵なんですか? ポプラ林の二人。この絵にとても惹かれました。
友達と二人で出かけたので、あまり時間を家計見られなかったけれど、もう一度ゆっくり見てみたいと思った絵でした。
by moz (2017-12-22 07:09) 

コザック

こんばんは。
この展覧会。
ゴッホが憧れた日本、日本人が憧れたゴッホ!で
締めくくられてるのが素敵だと思いました。
この美しいループが何とも言えず心をつかんだと思いました☆
by コザック (2017-12-24 23:11) 

nicolas

ゴッホの絵って、画面全体がいつもじわじわ動いているように感じ、観るこちらもココロが何故かザワザワします。
色の置き方とか、絵の具の量とか、キョウチクトウの葉っぱにしても、
しなり具合があちこち向いてて、ホントに動きがありますね。
ミレーの種蒔く人の広重ぽいやつは、木が梅ぽいし、
大胆すぎてちょっと笑えますが、やっぱりゴッホだから、って許せちゃいます。

by nicolas (2017-12-25 17:02) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
*gillmanさん、<年季が入っているなぁ>その通りですね!お互いに惹かれあうものがあるんでしょうね。ゴッホは生きた年数は短いけれど、精力的に作品を制作して点数が多いですね。かなり見たつもりですが、初めて見る絵が数点あり、特に最後の「ポプラ林の中の二人」に心惹かれました。

*アールグレイさん、<日本の浮世絵など影響強くその作品に出ていると何だか嬉しくなります>→私も同感です。まだ外国との交流が盛んでなかった頃に、浮世絵を見つけ、一生懸命研究してくれて、うれしいですよね。
そう、私も淡い色彩でタッチのやさしい「ポプラ林の中の二人」が気に入りました。

*Inatimyさん、<ファン・ゴッホ美術館へ行くのを控えてます>→その通りだと思うわ。今回も前に日本で見た絵は、全部、ファン・ゴッホ美術館の所蔵でした。
「サント・マリー・ド・ラ・メール」の ゴッホ美術館の絵、検索して見ました。写生で描いただけあって、波の様子と海の色がとっても自然。伝説ではこの海辺にイスラエルから亡命して来たマグダラのマリアがたどり着いたんですってね。サント・マリー・ド・ラ・メールは、アルル郡だから、行くのに遠くはなかったんでしょうし、牧師の家に生まれ牧師を志したゴッホにとって、この伝説の海は、ぜひ、見ておきたかった場所だったんでしょうね。う~ん、比べて見ると、プーシキンのは、後日、アトリエで制作っていう感じがします。故に、砂はついてなさそう。

*cocoさん、この雪景色いいでしょ。実際に見ると、こんなにはっきり色の対比がないんです。だからこそ、白一色の世界を絵の具の塗りの盛り上がりも交えて、こんなふうに表現できるって、すばらしって思います。来年の関西展でじっくりご覧になってくださいね。
絵が一枚しか売れないのでは、生活が大変ですね。弟テオやガシェ医師の支援があったからでしょうね。<時代がゴッホに追いついていなかった>→ そうでしょう。当時は、ティソが描くような端正な風俗画が人気だったようです。

*mozさん、mozさんの記事は、<作品とその影響を受けた元の浮世絵等を並べて展示をしてくれる>ことに焦点を当てて、実際に絵を出して、わかりやすく説明してくださっていて、いいなぁと思いました。
原田マハさん、ゴッホについての本もかかれてるのですね。マハさんはいつもよく調べたうえで自分の創造を交えて、わかりやすく書いてらっしゃいますね。時々、マハさんの本で読んだことと、実際が入り組んでしまいます。
最後の絵、私も大好きです。しかも最後の作品ときくと、天国をイメージしてるのかいしらと思ってしまいます。ちょっとクリムトの金色になる前の絵「樹々の下の薔薇」に似ています。

*コザックさん、この展覧会、コザックさんはかなり前にいらして記事になさってましたね。ミュージアムショップでゴホンといえば龍角散を売ってなかったんですよね(笑)。やはり、比較展示がわかりやすいですね。ポスターのゴッホの花魁だけを見ると、なんじゃこりゃの感じがあるのですが、「花魁(溪斎英泉)」の原画を見ると、なるほど!とわかりますね。
第二章の日本からゴッホ詣でをする人たちのことも、面白かったです。昔からゴッホを熱烈に好きな人たちがいた、とわかりました。これがコザックさん曰くの「美しいループ」になっていくんですよね。

*nicolasさん、<画面全体がいつもじわじわ動いている>→ うねりがあるって私も思います。絵のざわざわ感がにこちゃんの心に届くんでしょうね。夾竹桃の葉っぱの大きなうねり、背景の草緑の中の小さなうねり、それらが動きを作ってますね。ダイナミックな色づかいも魅力です。
<大胆すぎてちょっと笑えますが、やっぱりゴッホだから、って許せちゃいます。>
→ その通りね。こんな大きな太陽ないだろうなんてツッコミもなしで(笑)
by TaekoLovesParis (2017-12-31 11:49) 

staka

私も12月に行ってきました。ゴッホの日本への憧れがよく展示されてましたね。
by staka (2018-01-02 22:58) 

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