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2017年05月| 2017年06月 |- ブログトップ

ランス美術館展 [展覧会(洋画)]

tirashi.jpg


友達Mが一緒に行ってほしい展覧会があるというので、「どこ?」ときいたら、
「新宿西口の損保ジャパン、ゴッホのひまわりのあるところなんだけど、ランス美術館展を
やってるの。フジタがたくさん出てるから」


入ってすぐにあったのがこの絵。顔だけが目立つ。背景の色と服の肩から袖部分がほとんど同じ色
なので、目をひく。ヨーゼフ・シマ 『ロジェ・ジルベール=ルコント』 1929年
シマは、チェコで生まれ、後にパリに出て、シュルレアリスムの作家たちと交流した。

Shima.jpg


展覧会は、年代順の配置で、4つのセクションに分かれている。
1.国王たちの時代
2.近代の幕開けを告げる革命の中から
3.モデルニテをめぐって
4.フジタ、ランスの特別コレクション
「平和の聖母礼拝堂」のための素描


[1]国王たちの時代の絵は、肖像画が多い。
リエ=ルイ・ペラン=サルブルー 『ソフィー夫人(またの名を小さな王妃)の肖像』 1776年
ロココ調。ソフィー夫人はルイ15世の6女。マリーアントワネットの義理の姉なので、
アントワネット的雰囲気の豪華な服と家具。
sofhi.jpg

フランスが栄華を誇ったのは、アンリ4世に始まるブルボン朝の時代。
フランス人に「アンリ4世は偉大な王様よね」と言うと、大抵は大いなる同意が得られる。
アンリ4世の次の王様ルイ13世の肖像画があったが、色白細面の女性的な風貌に少々の違和感。
フィリップ・ド・シャンパーニュ(に基づく)『コルベ―ル』は、威厳を持って描かれ、偉大な政治家で
あったと伝わってきた。


[2]アントワネットの次の時代は、フランス革命の時代。
絵の分野は、優雅なロココ調に代わって、「新古典主義」の時代。
真打登場。ここで、この絵に会えるとは思わなかった。
ダヴィッド『マラーの死』 フランス革命の指導者マラーの死を取り上げたこの絵は人気が高かったので、
ブリュッセル美術館の作品と同じものを、ダヴィッドの工房でいくつか再制作したそうだ。
手に持つ手紙は、暗殺者からのもので、1793年7月13日、Charlotte Corday と名前が記されていた。
David_Marlor.jpg


ダヴィッドの次の時代の絵画の主流は、ドラクロワに代表されるロマン派。
『ポロニウスの亡骸を前にするハムレット』 1854~56年
これは油彩画だが、ドラクロワは、当時発明されたリトグラフの技術を使って、1834年から
ハムレットの連作を発表し、好評だった。
Dolacrois.jpg


先月、西洋美術館で回顧展があったシャせりオーの絵も2枚あった。
『バンクォーの亡霊』 1854年 シェクスピアのマクベスの一場面。
ここには展示されてないが、シャせりオーはマクベスの別の場面も描いている。
展示されていたもう一枚は「とらわれの女」

Chasseriau.jpg



シャンパンで有名なポメリーの「ポメリー夫人の肖像」は豪華な服で美しく描かれていた。
一方、クールベ『彫刻家マルチェロ(カスティリオーネ=コロンナ公爵夫人)』1870年は、写実の
クールベなので、飾り気なく描かれていた。
コローの『川辺の木陰で読む女』1965年、
ブーダン『ダンケルク周辺の農家の一角』1889年
ドーミエ「画家」、カンバスの前に立つパレットを持った画家、自画像なのだろう。
アンリ・ファンタン=ラトゥール 『まどろむニンフ』は、霞がかった天空にいるニンフと天使たち。
著名な画家の作品が一枚づつ展示されていた。



[3]次のセクション「モデルニテをめぐって」は、1870年代印象派の時代からポスト印象派まで。
シスレー『カーディフの停泊地』 1897年 ポメリーの経営者家の所蔵作品。
カーディフはウェールズの首都。旅をしたときの作品だろう。

Sisley.jpg


ピサロ『オペラ座通り、テアトル・フランセ広場』 1898年 これもポメリーの経営者家の所蔵
Pisaro.jpg


ゴーギャン『バラと彫像』 1889年
色の分割で画面を構成。花瓶の横にある小さな彫刻はゴーギャンがマルティニーク島での作品。
よく見ると、バラの花、ひとつ、ひとつは色が微妙に違う。このくすんだ色合いがとてもいいと思った。

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ぱっと会場が明るくなる大きな絵は、ドニ『魅せられた人々』 1907年
右側に海に連なる神殿風の建物。ヴェニスだろうか。横長のせいか壁画ふうでもある。

Dinis.jpg


ヴュイヤール 『試着』も良い絵だった。


[4]最後のセクションは、フジタのコーナー。
第二次大戦中に政府の依頼で戦争画を描いた藤田嗣治は、戦後、画壇から糾弾を受け、
日本に居辛くなった。1950年、フランスへ戻り、5年後にフランス国籍を取得した。
ランスは古くからシャンパンの町である。シャンパン会社「G.H.マム」の招待でランスを訪れた
フジタは、シャンパンのミュズレ(コルク栓に被せる金属の蓋)ためのバラの花の画を依頼された。
そして、フジタはランス大聖堂で洗礼を受け、洗礼名レオナール・フジタを授けられた。洗礼親は
「G.H.マム」の会長であった。

フジタは、「G.H.マム」の会長の援助で、「G.H.マム」の敷地内に「平和の聖母礼拝堂」を建立する。

平和の聖母礼拝堂」のためにフジタは壁画をフレスコで作成。この時、フジタは70才過ぎ。
礼拝堂を造りたいという信念があったから、体力も続いたのだろう。壁画を写真パネルで紹介。
さらにステンドグラスのための「聖ベアトリクス」の下絵、彩色した絵、太い黒の輪郭線を加えた
ステンドグラス完成品とプロセスがわかるようになっている。
「七つの大罪」の大きな絵も、デッサンと完成品の2つがあった。


チラシに使われている絵は、『マドンナ』 1963年
映画「黒いオルフェ」の主演女優を中央に、周囲に15人のアフリカ系ケルビムを描いている。
すべての民族の平和を祈るフジタの考えであろう。


『奇跡の聖母 』1964年 聖母マリアが盲目の女性の眼に指を当てている。
周囲には大勢の病人がマリアの奇跡の成就を待っている。美しく穢れない表情のマリア。

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これは絵葉書だが、著作権があるので、ADAGP Paris(フランスの著作権団体)の文字が入っている。


フジタとえば、ネコの絵を思い浮かべる人も多いだろう。それそれの猫の表情、見飽きない。

『猫』 1963年
Foujita.jpg


有名な画家の作品が1点ずつあり、地方都市の美術館という感じがした。
大きな感動はないが、親密さがあり、予想以上によかった。

後半は、フジタの礼拝堂に的が絞られているので、感動した友達は、いつかここに行きたいと
帰り道、ずっと言っていた。

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ブリューゲル「バベルの塔」と絵の映画

東京都美術館で開催中の「バベルの塔」展、私のまわりでは、「見た?すごかったわね」と
ちょとした話題になっている。職場の同僚からも「行きましょう」と誘われたが、気乗りがしない。
なぜなら、展覧会は、ブリューゲルの「バベルの塔」+ヒエロニムス・ボスの作品という構成
で、ボスが好みでないことと、「バベルの塔」はウィーンで見たことがあるからだ。

tirashi.jpg


ブリューゲルの「バベルの塔」は2つある。
都美術館て展示中のオランダ・ボイマンス美術館のものと、ウィーン美術史美術館のものである。
ウィーンのは、1563年制作、ボイスマンのは5年後の1568年の作である。
そしてウィーンのは、横155cmとボイスマンの2倍以上の大きさ。
緻密さはボイスマンのほうが勝る。

Babel_KunstWien.jpg

ブリューゲルの他の絵もそうだが、細かく緻密な描写が特徴。
チラシの写真からは見えないが、ボイスマンのは塔の工事現場で働く人1400名が米粒くらいの
小ささで描きこまれているそうだ。
ウィーンのは左下に、塔の建築主の王様が何やら文句を言い、職人頭たちが、「お赦しを」と
膝まづいているようすが見えるが、工事現場で働いている人は見えない。実物は横155㎝なので、
働いている人たちは一人1㎝くらいで描かれ、建設作業のようすがわかる。

2つの絵を比べると、ボイスマンの方が後で描かれているので、雲が低い位置に描かれ、
バベルの塔が天に届こうとする高さだったとわかるようになっている。

大勢の人が描かれていることから、そこには、ドラマがあると容易に想像できる。

2011年にポーランド・スウェーデン合作の『ブリューゲルの動く絵』という映画が作られた。
ブリューゲルの代表作の1つ「ゴルゴタの丘への行進」の世界を実写とCGで再現した映画で、
見ているうちに、16世紀のフランドル地方に入り込んだ気分になり、後から考えると、歴史映画
のようでもあった。
Cinema-Brugel.JPG

「ゴルゴタの丘への行進」は1564年に制作され、ブリューゲルの作品中、2番目に大きい作品で、
イエス・キリストが十字架に磔にされる場面が描かれている。
gorugodaBrugel.jpg
右奥に円形の処刑場が見え、中央に白馬にまたがった人がいて、その上に横たわる十字架
があり、キリストが縛られている。馬に乗った赤い服の兵士たちが周りを囲んでいる。

映画では、この一枚の絵の中にいるそれぞれの人々の物語が繰り広げられていく。
16世紀のフランドル地方。森で、きこりが木を切る、何を作ってるのかと見つめていたら、十字架!
これにキリストが磔にされるのだ。
のんびりと暮している新婚の夫婦。子牛を売りに行く途中、野原でお弁当を広げ昼食。
突然、赤い服の兵士が現れ、「カソリックでないから」と、虐待、殺されてしまう。
当時のフランドル地方は、赤い服のスペイン・ハプスブルグ家の圧政下という社会状況がわかる。
些細なことで農民が殺されていくのだ。[たらーっ(汗)]

岩山の上に風車のある粉ひき小屋があり、ここに神がいて、下界の生活を見守っているのだそう。

絵の右下、グレーのベールの聖母マリアは嘆き悲しんでいる。
絵の中の人物の物語を再現しているので、登場人物は絵と同じ衣装を着ている。
ブリューゲル役がルドガー・バウアー、マリア役は、シャーロット・ランプリング、
絵の依頼者役はマイケル・ヨークと渋い演技達者な人たちが主演。監督はレフ・マイェフスキ。
上映映画館:渋谷・ユーロスペース

映画のチラシからわかるように、ブリューゲルは白髪のおじいさん。実際のブリューゲルは、
39才から44才(生年が不詳)で亡くなっているのに。。。

ブリューゲルの作品は約40点。そのうち12点がウィーン美術史美術館にある。
「雪の狩人」「農民の婚礼」も注目されている作品。
長男も同名で絵描きなので、「バベルの塔」はピーター・ブリューゲル(父)と表記される。

  

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