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ベルギー奇想の系譜 [展覧会(洋画)]

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東急Bunkamuraザ・ミュージアムへ「ベルギー奇想の系譜」を見に行った。
ヒエロニムス・ボスに端を発する「奇想」、ブリューゲル展よかった~という友達から
「何か展覧会に行きましょう」と誘われたので、それなら、これでしょう!
ブリューゲル展(バベルの塔)には、ボスも出ていたので。

第1章 15~17世紀のフランドル美術
ヒエロニムス・ボス(1450頃~1516)は、ルネサンス期のフランドルで活躍した。
聖書に題材をとり、内容は訓話なのだが、幻想的で怪奇な絵のため、見た人に強い印象を残す。
今回、チケット(上の写真)やチラシに使われているのは、ボス工房の「トゥヌグダルスの幻視」
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騎士トゥヌグダルスは、この絵の左下にいる赤い服の人。後ろに守護天使が立つ。
彼が見た地獄における「七つの大罪」がここに表されている。
たとえば、右上の赤いベッドに横たわっている人は「怠惰」。その下の丸くて白い家の中に
いる剣がささった人は「激怒」、激怒した兵士に殺された。その横、大量の酒を飲まされている
人は「大食」、中央の人は、賭け事を表す四角いサイコロの上に座ったので腹をさされた「邪淫」
こんな具合に説明を読みながら、七つの大罪を探り当てるのは、友達と一緒だから楽しい。
「寝るのが怠惰だったら、私、怠惰だから、地獄行きかも~」なんて言いながら。
閉館前の時間で、すいていたから、目の前でじっくり見れたし、ひそひそ話せた。


「聖クリストフォロス」 ヤン・マンディン 制作年不詳

聖クリストフォロス.jpg

これも不思議な絵。右手前の巨大な修道女のは下が建物になっていて娼館。
中央に杖を持ち立つ人が、川から上がるクリストフォロス。幼子キリストを肩車している。
小さな男の子が、川を渡りたいというので、御安い御用とおんぶして川を渡り始めたクリストフォロス。
ところが、川の中を一歩進むごとに子供が重くなってくる。あまりの重さに、この子はただ者ではない、
と気付き、名前をたずねると、イエス・キリストであると明かした。キリストは全人類の罪を背負って
いるから重いのである。
岸に降り立つと、目の前にあるのは娼館で、何人もの人が出入りしている。
巨大な娼館は、「聖アントニウスの誘惑」にも描かれていた。
「聖アントニウスの誘惑」は、人気の主題だったので、この展覧会でもボスのを含め
5点、展示されていた。見比べることができるので、面白い。
ちなみに「聖クリストフォロス」も3点あった。

ブリューゲルは銅版画が17枚出ていた。七つの大罪7枚と、七つの徳目のうちから4枚。
「大きな魚は小さな魚を食う」
大きな魚は小さな魚を食う - コピー.jpg
大きな魚が小さな魚を飲み込んでいる様子というより、吐き出してる感じがするのだが。
ユーモラスに描かれている。魚が空を飛ぶのは、ボスからの引用だが、遠景にアントワープと
わかる大きなクレーンがある港を描きこんでいるので、人気があった。

ブリューゲルは、第二のボスと言われていたそうだ。ボスふうの絵に日常性を加えたのが
ブリューゲル。アントワープの景色を描きこむなど、その例だろう。

「聖パウロを訪ねる聖アントニウス」 ダーフィット・テニールス(子)
聖パウロをたずねる聖アントニウス.jpg
これは奇怪ではない落ち着いた絵。
聖アントニウスは90歳になったとき、113歳で洞穴で隠遁生活を送る聖パウロを訪ねた。
その時、鳩がパンを持って舞い降りた。


ルーベンス原画の銅版画も7枚。「ライオン狩り」など、さすがルーベンス。迫力が違う。



第2章 19世紀末から20世紀初頭のベルギー象徴派・表現主義

時代は、一気に19世紀末になる。

再び「聖アントニウスの誘惑」が登場。1878年、フェリシアン・ロップスの作品。
フロベールの小説「聖アントニウスの誘惑」に題材を得たそうで、画面中央の十字架にかかる
のは豊かな肉体の裸婦。キリストを脇に押しのけて、自分が十字架に。十字架の上のINRIと
いう文字がEROSに代わっている。十字架の前で頭を抱えて卒倒しそうな聖アントニウス。

同じくロップスの「舞踏会の死神」は、死神として骸骨になった女が白いガウンを着て恍惚の
表情で踊っている。白いガウンは、カソリックの司祭がミサで着るもの。ロップスは教会の
権威に反抗し、この絵を描いた。


これもフェリシアン・ロップス 「娼婦政治家」 1896年 多色刷銅版画 
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奇妙な絵ですよね。
娼婦の女性は豚を連れ、足元には、彫刻、音楽、詩、絵画と書かれた擬人像がある。
つまり、娼婦と豚はこれらの芸術を理解せずに踏みにじっている。政治家を娼婦に譬えて批判した。


「ブリュージュにて、聖ヨハネ施療院」 1904年頃 フェルナン・クノップフ
施療院の建物と運河のみの静かな風景。絵の写真は、ここ

「レテ河の水を飲むダンテ」1919年 ジャン・デルヴィル
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この絵はどこかで見たことがあるのだけど、どこだったのか思い出せない。
姫路市立美術館所蔵だから見る機会があったのだろう。 → ここBunkamura での展覧会でした。
ダンテの「神曲」に、ヒントを得た作品。冥界を巡り歩いているダンテ。レテ河の水を飲むと、
前世のことを忘れるときき、過去の恋を忘れるために水を飲もうとしている。


「運河」1894年 ウィリアム・ドグーヴ・ド・ヌンク
横に長い絵。水をたたえた夜の河。向こう岸に等間隔に立ち並ぶ樹木、廃屋のような建物。
人の気配がなく静かで幻想的。


骸骨で有名な画家ジェームズ・アンソールは11点の展示。
「オルガンに向かうアンソール」1933年
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オルガンの向こうの大きな窓の外に大勢の人が、お祭り?と見えたが、解説を読んだら、
若き日の大作「キリストのブリュッセル入城」1888年を描き込んでいるそうだ。アイディアが面白い。

第3章  20世紀のシュルレアリスムから現代まで


「海は近い」 1965年 ポール・デルヴォー
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まさに幻想の世界。
デルヴォーの絵には、汽車と裸婦がよく登場する。


「大家族」 1963年 ルネ・マグリット
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薄暗い海に突然現れた明るい青空と夏の雲を背負った鳥。
この鳥は、家族愛を象徴するカササギで、ブリュッセル郊外ではよく見かけられる。
これとよく似たもっと明るい色合いのものは、今はなきベルギーのサベナ航空の
シンボルマークとして使われていた。

マグリット作品は10点だが、マグリット!と思わせる良いものがない、と思ったら、
日本の美術館蔵のものばかりだった。


ここからあと、現代美術が面白かった。

マルセル・プロータースの作品 「マウスが『ラット』と書く」mouse écrit le rat 1974年 活版印刷
「マウス」が自分の手の影を壁に写して「ラット」*を書くつもりが「猫」になってしまった。
   *ラットratは英語でもフランス語でも大きなネズミ


「ティンパニー」2006~2010年 は、レオ・コーペルスの作品。ミクストメディア
筆を咥え吊るされた骸骨が、筆でドラムをリズミカルに打つ。笑えるけど、骸骨!
ベルギー芸術には死の陰や骸骨が多く表れる。地理的に各国にはさまれ、戦場になってきた
歴史があるからだろうか。

「プレッツェル」 2006年 ウィム・デルヴォワ
お菓子のプレッツェルが黒く丸い立体に。よく見ると、プレッツェルの棒の部分は、
磔刑にされたキリスト引き伸ばしたもの。「えーっ!」 ユーモア?ちょっとグロ。

絵画でも「磔刑図」1999年 リュック・タイマンス
神の啓示の光だそうで、画面から溢れ出る白い光が眩しい。

時代は1996年なのだが、入ってすぐの場所に展示されていたのが、
「フランダースの騎士(絶望の騎士)」 ヤン・ファーブル
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この写真ではわからないけれど、うさぎの耳を持つ頭の部分がキラキラ黄金色に輝いている。
それもそのはず、黄金虫の殻をびっしり挟み込んでいる!ホンモノでびっくり。
昆虫採集を思い浮かべるが、それもそのはず、ヤン・ファーブルは「ファーブル昆虫記」の
ファーブル先生の子孫。

この展覧会「ベルギー奇想の系譜」のサブタイトルは、「ボスからマルリット、ヤン・ファーヴルまで」
だった。17世紀から突然19世紀末までとんだが、ベルギー特にフランドル美術の奇想、というか
奔放な発想+ユーモア、根底にあるキリスト教信仰、これらを少し知ることが出来た。


9月24日まで。

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