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プーシキン美術館展(東京都美術館) [展覧会(洋画)]

プーシキン美術館展は、何年かに一度、開催されている。


プーシキン美は、近代フランス絵画を多く所蔵しているので、同じ絵の来日は少ないし、
質の高いものが多い。今回のテーマは「旅するフランス風景画」である。

1、最初の作品は、クロード・ロランの「エウロペの略奪」1655年
クロードロラン.jpg

あまり大きくない画面、風景画の下のほうにギリシア神話の「エウロペの略奪」の場面
が描かれているが、小さいので、近くに寄らないと見えない。
白い雄牛に変身したゼウスは、侍女たちと海辺で遊ぶエウロペに近づき、エウロペが雄牛
に腰をかけた途端、ダッシュで海を駆け抜けクレタ島に向かった。
ロランは、イタリアでアゴスティーノ・タッシに学び、光を意識した風景画の中に
神話を取り入れた。当時、風景画は評価が低かったので、古典的な神話を取り入れることで、
買い手がついたのである。空の青、雲、木々が美しい。


2、ミレーの「ハガルの追放が描かれた風景」(17世紀後半)も風景画の中に旧約聖書の
一場面が描かれている。長らくプッサンの義理の弟デュゲの作品と思われていたが、
プーシキン美術館に収蔵された際、ミレーの作品と判明した。


3、クロード・ジョセフ・ヴェルネ「日の出」と「日没」1746年(写真なし)
陽の光がまぶしい朝焼け時、波しぶきをあげる海と出航しようとする小舟を描いた
「日の出」と金色に海が染まる夕焼け時のの帰港の様子を描いた「日没」



4、ジエム「ボスポラス海峡」19世紀後半

ターナーふう.jpg
ターナーふうの海景。

ジエムは、エキゾチックな風景や海景を得意とした。
手前には、ターバン姿の男たち。遠方にはイスタンブールの街並み。
存命中にルーヴル美術館に作品が所蔵された最初の画家である。


5、コワニエ/ブラスカサ「牛のいる風景」19世紀後半
牛のいる風景.jpg
コワニエもブラスカサも共にイタリアに学んだ。

風景画よりも動物画家として評価されたブラスカサは、風景部分をコワニエに
頼んだ共作。


6、コロー「夕暮れ」1860~70年 (写真なし)
うす明るさの中、大きな2本の木と夕暮れを眺める2人の人物。得意とする
「思い出」の風景である。しかし、1870年代中頃には、現実の風景が好まれるように
なったので、描いたのが横長で画面の3分の2が雲天の「嵐」(写真なし)である。


7、クールベ「山の小屋」1874年頃

クールベ山の小屋.jpg
雪で覆われたスイスアルプスの山々。手前にひっそりと佇む山小屋。
洗濯ものや煙突の煙から日々の暮らしが伝わる。
民衆の日々の暮らしを描いたクールベは、パリ・コミューンで民衆側に立って活動したが、

政府軍に捉えられ投獄されてしまう。身の危険を感じたクールベはスイスに亡命し、
ここで亡くなった。


8、ルノワール「庭にて、ムーラン・ド・ラ・ギャレットの木陰」1876年(写真なし)
木漏れ日の下での語り合い。モデルは大作「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」
と同じ面々だろう。
服が同じなので。

9、ルイジ・ロワール「パリ環状鉄道の煙」1885年(写真なし)
横3mある大きな絵。厚い雲に覆われた空と雨上がりの湿った道路の間をモクモクと
煙が横切る。煙で部分的に見えなくなっている建物や人々。手前の煙がない部分の
馬や人々は明快に描写されている。モノトーンだけの画面が印象に残る。


10 ラファエリ「サン・ミシェル大通り」1890年代

ラファエリ_サンミッシェル大通り.jpg
奥にパンテオンが見える。通りの両脇の建物は6階建て。

路面がぬれていることから、雨上がり、人々が街に繰り出してきた様子とわかる。
人々の服装から、当時の流行が推測できる。活気あるパリの街。


11 コルテス「夜のパリ」1910年以前 (写真なし)
19世紀、
ガス灯が設置され、配電網も敷かれ、パリの街は明るくなった。
店の灯りがガラス越しに通りを照らし、道行く人が見える。遠くに見えるのは、
パンテオンだろうか。コルテスはパリの景色を繰り返し描いた画家。


12 アルベール・マルケ「パリのサン・ミシェル橋」1908年

マルケ_パリのサンミッシェル橋.jpg

マルケはサン・ミシェル河岸に住んでいたので、これはアトリエから見下ろした
景色だろう。フォーヴの時代を経て、色彩が落ち着いてきている。
簡略化された形と明るい色彩でリズミカルな絵。


13 モネ「草上の昼食」1866年(上のチラシに用いられている絵)
チラシに使われているのだから、今回の一番の目玉作品。
パリの近郊でピクニックを楽しむ人々の様子。マネの同名の作品の3年後に描かれた。
モネ26才。中央にすわる女性2人はモネの妻カミーユがモデル。後ろに立つ背の高い男性と
左端の男性は、画家バジールがモデル。
木漏れ日や光の輝きは実際の絵で見るとよくわかる。

14 モネ「陽だまりのライラック」1873年

モネ陽だまりのライラック.jpg
満開のライラックにまぶしいほど光が差し込む。
パリから鉄道で15分の地、アルジャントゥイユに庭付きの家を借りたモネ。

家の庭で、妻カミーユと息子ジャン、ジャンの乳母がモデル。
同じ時期にモネは「ライラック・雲天」を制作した。同じ場所、同じ構図、天候の
違いでの絵は、積みわらや睡蓮といった後の連作の先駆けである。
「ジヴェルニーの積みわら」「白い睡蓮」も出品されている。


15 セザンヌ「サント・ヴィクトワール山の平野、ヴァルクロからの眺め」1885年

セザンヌ山.jpg

セザンヌはサント・ヴィクトワール山の絵を30点以上制作している。
これは初期の作品。山が空気を感じさせ清々しい。中景の家の直線とはっきりした面が
全体を引き締めている。
最晩年の幾何学的な形の連なりの絵もっ展示されていたので比較ができて面白い。


16 ボナール「夏、ダンス」1912年

ボナール.jpg

プーシキン美術館の作品コレクターであったモロゾが注文した自邸用の装飾画。
具体的な物語ではないが、明るい光に満ちた牧歌的な風景。愛犬と戯れる黒い服の女性は
ボナールの妻マルト。


17 アンリ・ルソー「馬を襲うジャガー」1910年

ルソー_馬を襲うジャガー.jpg

熱帯ジャングルの木々の中央に動物がいる構図はルソーの得意とするところ。
ジャガーが白い馬にがぶっと噛みついている場面だが、馬が痛そうな顔をしていない。
それがこの絵を悲惨にさせず、幻想的な雰囲気にしているのだろう。
ジャングルの緑に所々配置された赤、オレンジ、白の花がアクセントになっている。


☆彡すばらしい作品ぞろいなので、おすすめです。7月8日まで。

nice!(40)  コメント(14) 
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コメント 14

coco030705

こんばんは。
すばらしい作品揃いですね。アルベール・マルケ「パリのサン・ミシェル橋」は初めて見ました。おもしろいです。その他、おなじみの印象派の美しい絵画や、風景画もいい作品がありますね。私はルソーの絵に興味を持ちました。調べたら、7月21日から大阪国立国際美術館に巡回しますね。嬉しいです。


by coco030705 (2018-06-09 22:48) 

Inatimy

この中でパッと印象に残ったのは、アルベール・マルケ「パリのサン・ミシェル橋」。
というのも、最近どこかでこんな感じのを見た、って思い出して、考えてみたら、
Taekoさんの2つ前の記事<思い出の「ビュールレ・コレクション展」>でした。
そこに、同じような構図のマティスの「雪のサン=ミシェル橋、パリ」が。
マルケってマティスと親しくしてたみたいだから、マティスのあの絵もマルケのアトリエから見た風景だったかもしれませんね^^。
その次はコワニエ/ブラスカサ「牛のいる風景」かな。オランダの画家のパウルス・ポッテルを思わせる感じ。のどかでいいですよね。
どの絵も春から夏にかけての雰囲気。展覧会の絵にも季節感がありますね。
by Inatimy (2018-06-09 23:50) 

yk2

僕もプーシキン展は3回目ですが、過去の都美『マチスの金魚40年振り』(って、そんなタイトルの展覧会じゃなかったと記憶してますが・・・笑)と横浜美術館の時とで見覚えのある同じ絵が幾つもまた来てるのかなと高をくくってましたが、思いの外知らない作品ばかりで嬉しかったです。

ルソーの『馬を襲うジャガー』、マンハッタン・トリニティってサイラス・チェスナットのピアノ・トリオのCD『ジェントル・レイン』(2006年)のジャケットに使われていて、僕ね、それをCDショップで見掛けた時ルソーのパロディだと思っちゃったんです。taekoの・・・もとい(笑)『ライオンの食事』の。だって、ぱっと見この絵、馬がとぼけた顔して逆にジャガーを襲って食べちゃってるみたいに見えたんですよ。馬が全然痛がってないから襲われてるふうにはまるで思えなかった(笑)。で、ジャケットに惹かれてアルバム買ってクレジット確かめてみたら、パロディーじゃなくてルソー本人の作だったのでびっくりした記憶があります(笑)。ルソーはそもそもこの絵でジェリコーやドラクロワの馬を襲うライオンや虎の絵を参考にしたのかもしれないけど、彼独特の表現力に因って、劇的なロマン主義とはほど遠いほのぼのした絵になっちゃってるところが面白い絵です(^^。
by yk2 (2018-06-10 10:44) 

gillman

痛みがあるので歩行が今のところ長時間できず、美術館にも行けないのでちょっとストレスが溜まっています。リハビリをして期間の終わらないうちに上野に行きたいです~。
by gillman (2018-06-10 12:07) 

nicolas

プーシキンってロシアでしたっけ。
なのに、考えてみたらなかなかすばらしいコレクションですよねー。
ラフェアリの「サンミッシェル大通り」が、1890年代。
オスマン男爵のパリ大改造後ですね。
あの大改造で、失ったモノ(建物)も多かったみたいですが、
こうしてウツクシイ街並みになったという、一種の証拠絵画ですね~。
by nicolas (2018-06-11 16:20) 

ふにゃいの

昨日、見に行きました。
ルソーの絵、なんか、良かったです。
ジャガーの顔がなくて馬の表情がかわいらしいのが何とも…
モネやマルケ、ヴラマンクが好きなので
楽しかった♪
by ふにゃいの (2018-06-17 10:47) 

TaekoLovesParis

ふにゃいのさん、これを見て、パンダのシャンシャンを、、だったのね。
ルソーの絵は、深刻な題材が絵の表現力で、いとも可愛らしくなっているのに感心します。馬の脚がお人形さんの足のようだし。
マルケとヴラマンクは共通点があるけど、+モネっていうのが、なんとなく、ふにゃいのさんらしいなー。
by TaekoLovesParis (2018-06-20 21:33) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。
▲cocoさん、ここのお返事が遅くなってる間に、地震で大変でしたね。少しは落ち着かれたかしら?この展覧会、大阪に巡回とは、良かったです。
モネ「草上の昼食」は、はじめはサロンに横6mの大作として出品予定で、制作がほかの画家たちからも注目されていたんですって。でもそれは未完に終わり、この下絵が残ったといわれてます。
マルケのこの絵もルソーの絵も明るさと簡略化された形、リズム感と共通しているものがありますね。

▲Inatimyさん、わぁ、ご明察。ふたつとも同じ場所から描いた絵です。
マティスが子供たちのために引っ越したので、そのアトリエにマルケは入ったの。サン・ミシェル19番地の6階のアトリエ。6階からだから、かなり見下ろした構図ですよね。当時は、この辺りが流行りの場所だったんでしょうね。ひとつ上の絵も「サン・ミシェル大通り」でしょ。
オランダの画家のパウルス・ポッテルの絵、検索したら、Inatimyさんの記事で見た牛の絵が出てきたので、マウリッツイス記事のつまんなそうな顔の牛をもう一度、見てきました。印象に残る絵ですよね。

▲gillmanさん、リハビリの成果が現れた頃でしょうか?
歩くのが大変なのは辛いですね。都美術館は改装したから、きっとバリアフリーでしょう。けれども上野駅からちょっと距離がありますね。梅雨明けが待たれますね。

▲Nicolasさん、プーシキンはロシアです。帝政ロシア時代のお金持ちのシチューキン氏、モロゾフ氏のコレクションで出来た美術館です。ロシアでは、エルミタージュに次ぐ規模の美術館なので、文豪プーシキンの名前をつけたのでしょう。
パリにアレクサンドル3世橋って、1900年の万博の時できた金ぴかの橋があるから、ロシアとは友好関係。パリ大改造画の街の様子を描いた絵は、ロシア人にとっては憧れだったと思うわ。
シチューキンはマティスとピカソと最大の庇護者だったんですって。1917年のロシア革命で終わってしまうけど。

by TaekoLovesParis (2018-06-23 17:36) 

staka

ルソーの絵を見て、つい最近読んだ原田マハ『楽園のカンヴァス』を思い出しました。絵がお好きなTaekoLovesParisさんにはお勧めかも?
by staka (2018-06-23 18:50) 

TaekoLovesParis

stakaさん、原田マハ『楽園のカンヴァス』読みました。ルソーの森とヤドヴィガの描かれた「夢」が表紙で、話もここから始まっていきますね。ミステリーっぽいので、先が気になって、どんどん読み進めちゃいます。読み終わって、どこが本当の話なのか、それとも全部フィクションなのか、気になりました。
by TaekoLovesParis (2018-06-23 23:20) 

TaekoLovesParis

yk2さん、ルソーの『馬を襲うジャガー』が The Gentle Rainのジャケに使われてたんですね。白い馬だから白いフォントが効果的ですね。字体もかちっとしてなくて、かわいそうな白馬さんの細い脚を際立たせている。

yk2さん、私がいつまでもコメントの返事を書かないから、元絵の「ライオンの食事」は、これ!とばかりに『馬を襲うジャガー』と比較の記事をUPなさったのかしら。2枚の絵が同じ大きさで並んでると、構図がほぼ同じって、すぐわかりますね。ほかにも森が舞台の絵はあったはず、と調べたら、「飢えたライオン」1905年、「大豹に襲われる黒人」1910年。年代が古い「飢えたライオン」は、ジェリコーの「白馬を襲うライオン」的です。「大豹に襲われる黒人」は、人が黒子みたいなシルエット。つまり、顔に表情がないから、痛いのかどうかわからない。凄惨さがなくて穏やかに見えました。だから、絵のその部分だけメルヘンっぽくなる不思議さ。
「夢」も森の中。左にヤドヴィカが座り、中央にライオン。
昨年行った恵比寿アトレの屋上ビアガーデンは「ヤドヴィカ」という名前で植栽に囲まれた楽園ふうの所で、すてきですよ。

by TaekoLovesParis (2018-06-24 01:14) 

staka

『楽園のカンヴァス』やはりお読みでしたか。
私も一気に読みました。著者は元キュレーターだけあって詳しいですね。
本の最後に、史実に基づいたフィクションとありましたが、どれが史実かフィクションか、気になりますよね。
by staka (2018-06-24 09:57) 

りゅう

今日、観に行ってきましたよ♪
モネ等、私好みの作品がたくさんの展覧会でした。
そして、Taekoさんのご友人がガブリっって絵も見応えありました。
お馬さんがキョトンとして目がテンになってるなぁなんて・・・
by りゅう (2018-06-27 17:07) 

TaekoLovesParis

こんばんはー、りゅうさん。
サッカー、最後の10分、パス回しだけの時間稼ぎの終わり方だったけど、悲願の決勝進出が決まってよかったです。これで、さらに試合を見る楽しみがふえます。
プーシキン美術館展、良かったでしょ。
えっ、私の友人って誰?まさか人間じゃないなんてことは、、(墓穴)
まんまるの点●で表された馬の目の無邪気でかわいいこと。口の位置がビミョーなので、トラを噛んでみました、とも思えますね。
yk2さんは、それを記事にしてました。

by TaekoLovesParis (2018-06-29 01:16) 

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