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福沢一郎展 [展覧会(洋画)]

連休のある日、絵が好きな友達から「福沢一郎展、面白そうだから行きましょう」
と誘われた。興味があったけど、誘っても、誰も行かないだろうな、
と思っていたので、
渡りに船、早速、近代美術館に出かけた。
ちらし.jpg

福沢一郎(1898~1992)

群馬県富岡市に生まれる。東京帝国大学文学部に入学するが、学校にはあまり行かず、
朝倉文夫に彫刻を習う。1924-31年にフランスに滞在、彫刻を3年学んだ後、絵画に
転向。当時、フランスで流行していたシュールレアリスムを日本に紹介し、その後は、
社会批判を絵画で表現した。
晩年、文化勲章を受章。


●上のチラシの絵、「煽動者」1931年
パリ時代の制作。ヒットラーはすでにナチスを結成。この2年後に首相となるが、
軍国主義や粛清の暗い気配が夜の街を覆う。憲兵たちは慌ただしく街中を走り、
煽動者である中央の人物が、メッセージを拡声器で吐き出している。
実際にパリにいた福沢は、ヒットラーの下に団結しようとするドイツを批判的に
見ることができたのだろう。


Poisson de Avril.jpg
●「四月馬鹿」Poisson d'Avril  1930
エイプリル・フールのこと。フランスでは、「4月の魚」といい、魚の形をした
お菓子を食べたりするので、食卓の上や天井からさがった籠に魚が描かれている。
友達は常設でこれを見たから、福沢一郎を知っていると言っていた。
グラスでなく、食卓のキャンドルで乾杯しちゃうなんて、、、しかも、後ろの人は、
ワイングラスをどこまで傾けたらワインがこばれるか、ってやってみてる?グラスの
軌道が点線で表されている。
イラスト的なタッチだが、やはり画力がすばらしい。フランス的センスの絵。


展示は、ほぼ年代順。この後の帰国後は、作風が変わる。
福沢_牛.jpg
●「牛」1936年
明るいピンクの大地に驚く。牛は、雄牛で手前のは怖いほどの顔つきでこちらを威嚇。
奥にいる人間たちは、争っている。ここから向こうは争いの場だから来るなという意思表示
なのだろうか。
よく見ると、牛にはいくつか穴があいている。なぜ? 説明書きによると、
「これは満州国を表現。見かけと現実は違う。つまり日本から見たイメージと現地での
実際は違う。現地は穴だらけでぼろぼろ。牛は威嚇でなく、苦痛の表情なのだとわかる。
深いなぁ。。


●「女」1937年 (写真なし)
マザッチョの「楽園追放」をモデルにイブを描いたもの。
イブが悲嘆にくれたようすは、名画「楽園追放」の構図を思い出す。


福沢一郎_船舶兵基地出発.jpg

●「船舶兵基地出発」1945年
福沢も他の画家同様、戦争画を頼まれて、何枚か描いた。3枚ほど展示されていた。
当然、どれも暗い色彩の画面であるが、勇敢に戦っていますというものだった。
これも荒巻く波の中、船をこいで基地を出発する兵隊。1945年、終戦の年、無事、
帰れるのだろうか、と、胸が痛む。国民映画の宣伝用スティール写真をもとに描いた。


福沢_敗戦群像.jpg

●敗戦群島 1948年
敗戦だったが、戦争は終わったということで、空の色が明るい。
三角形構図を作る人々は疲弊し、死の一歩手前。

 

福沢_トイペ戦争.jpg

●トイレットペーパー地獄 1974年
[彼らはなぜトイレットペーパーを奪い合うのか]
というキャプションが大きくついていた。
1974年なので、私にはわかる。
1973年、オイルショックによるデマ騒動。「トイレットペーパーがなくなる」。
それは大変とみんなが買いだめをしたため、店頭からトイレットペーパーがなくなった。
デマに翻弄される人々を描いている。

戦後、福沢の描く人間は、裸の原始的なものになってきた。群衆を表すには、それがいい
と思ったのだろう。
福沢は、戦後、南米・メキシコへ1年以上、長旅をした。そこで、がらっと作風が変わる。
原色中心の色合いに変わり、ステンドグラスのような作風。
旅ののち「文明批評としてのプリミティヴィズム」という展覧会を開催した。
その時の作品が ↓ である。「埋葬」1957年
撮影可能作品。


福沢_メキシコ.jpg


福沢は知的なユーモアによって、社会の矛盾や人びとの愚かな行いを諷刺的に笑いとばした。
それが、チラシのメッセージ「このどうしようもない世界を笑いとばせ」なのだ、と
見終わってわかった。

作品は103点あり、ていねいな説明がついているので、見るのに2時間かかったが、見応えが
あり、とても良かった。

5月26日(日)まで。
同時開催の「杉浦非水」展では、図案家・非水による商業ポスターや絵はがき、原画などが
展示されています。昔の三越のポスターなど、今見ても斬新で、おしゃれな面がありました。
こちらもおすすめです。



nice!(41)  コメント(8) 
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コメント 8

nicolas

藤岡のにある、彼の故郷の福沢一郎記念館でいくつか見たことありますが、
100点以上あるとは、すごい枚数でしたね!
一時期、シャガールみたいな雰囲気の画風の時期もあったけど、
一貫してるのは、風刺が効いたピリリとした味わいですね。
風刺だけじゃなく、確かにユーモアがあるのが救いです。
本人も「俺ぁシュールリアリストじゃぁねぇ」って言ってたらしいので、
ブラックユーモア寄りなのかな。
Poisson d'Avril の、左手前の手が気になります。
その手から次に何か起きそうで、勝手に想像しちゃいそうです。
by nicolas (2019-05-23 18:02) 

TaekoLovesParis

にこちゃん、今回の展覧会では、「福沢一郎記念館」から借りてるものが多かったんですよ。富岡市出身だから、隣の藤岡市に記念館があるんですね。
<「俺ぁシュールリアリストじゃぁねぇ」>→ ふふ、反骨精神、この一言にも表れてますね。私はフランス時代の絵が、今見てもおしゃれでいいなと思いました。
この手でしょ、友達と私も「何を暗示してる?」って気にしました。後ろ3人の陽気さに比べ、手前は物思いに沈み、、救いの手?
友達は、「なんでおもちゃのような魚が2か所にあるのかしら」、フランス語わからなかったら、エイプリル・フールが「4月の魚」ってわからないですよね。春は魚の形のチョコ、たくさん、売ってますね。

by TaekoLovesParis (2019-05-23 19:22) 

coco030705

こんばんは。
何とユニークな絵画でしょう!面白いですね。
エイプリルフールが「四月の魚」とは。解説で絵がよくわかります。ユーモラスですね。
「トイレットペーパー地獄」すごいです。45年も前の絵!(ちょうどクイーンがデビューしたての頃ですね(^^♪)このとき、オイルショックだったことを、思い出しました。それが、こんな発想の絵になるなんて!!
最後の絵が好きです。色彩が美しいと思います。


by coco030705 (2019-05-24 00:01) 

yk2

福沢一郎って東京国立近代美術館の常設で『四月馬鹿』と『牛』を観たことがあるくらいでイマイチよく知らない画家なんですけど、明治生まれで平成までご存命だったんですね。トイレットペーパー騒動を題材にしてる!?で吃驚して、近美の展覧会サイトで年譜確認しちゃいましたよ。面白そうだとは思いつつ、明日までかぁ~(^^;。4月に杉浦非水は観に行ったんですけど、常設もがっつり観ちゃったから時間無くなっちゃったんですよねぇ。あそこへ行くと、つい夢中で写真撮り始めちゃうから、時間があっと云う間に経っちゃう。非水の展示替え後も観てないから、明日行くかなぁ・・・(暫し逡巡)。
by yk2 (2019-05-25 09:42) 

Inatimy

四月馬鹿・・・なぜ4月の魚なのか、不思議に思いつつもパリでは魚の形のチョコを美味しい♪とかじってましたが、いまだによく分からず。魚ってキリストの象徴にも使われてるのに、なぜカトリックの教会も多いフランスで?と謎のままです^^;。
昔の絵だと解説がないと難しいですね・・・牛の絵から満州国はなかなか繋がらず^^;。
トイレットペーパーの絵はオイルショックの時だと分かりましたが、テーマに扱われるほど大騒動だったんですね。当時、実家ではまだ水洗ではなくチリ紙だったゆえトイレットペーパーの買占めがあったと知ったのは、のちに、教科書だったもので・・・。
もし福沢一郎が今の時代を描いたらどんな風になるんだろう、って考えてました。ひょっとしたらトイレットペーパー地獄風に、ネットの情報に踊らされてる人間を描いたかしらなんて思ったり。
「杉浦非水」展、いいですね〜。タバコのパッケージデザインをされてた人ですよね。
以前あるブロガーさんところで昔のそのタバコを撮影されてたのを見たことがあり^^。
by Inatimy (2019-05-27 17:29) 

初夏(はつか)

「このどうしようもない世界を笑いとばせ」
まさしく、そんな感じですね。
どれも力強くて美しい色合い^^
「トイレットペーパー地獄」を見て、
1993年の「米不足」を思い出しました。
これから先も、同じことが起きるんでしょうね~。
by 初夏(はつか) (2019-05-28 08:31) 

TaekoLovesParis

にこちゃん、上のコメント、藤岡じゃなくて富岡ね。わざわざ知らせてくださってありがとう。
by TaekoLovesParis (2019-06-02 08:17) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。お返事遅くてすみません。
▲cocoさん、ユニークな絵画、まさにその通りなんです。フランス時代の絵は写実っぽい丁寧な描き方で、コミックに見えないけど、内容がシュールなんです。見ていくと、批判の対象のだけでなく、画法も変わっていって彼の一生を大雑把に感じとれました。45年前は、、ふふ、cocoさんにとっては、クイーンのデビューという大切な年ですね。

▲yk2さん、東京国立近代美術館の常設にあったんですね。常設は何回か見たけれど、覚えがなくて、、、こんなにシュールなのに。
yk2さん、今回、国立近美の常設の記事を載せてくださってるけど、こういうのがあると、カタログ的で役に立ってうれしいです。西洋美とか横浜美の常設紹介の記事も、折にふれ、続編でお願いします。コメント欄があいてないからここに書きました。

▲Inatimyさん、Poisson d'Avril の起源、諸説ありますね。旧約では、ノアの方舟:洪水がおさまってきた頃、ノアが陸地を探すため、ハトを飛ばすのが4月1日、でも、陸地は見つからず、戻って来たので、無駄なことをする日という解釈もあるそうで。
私も魚の形のチョコ、好きです。ウサギは食べちゃうのがかわいそうだけど、魚なら(笑)。オイルサーディンのようにぎっしり詰まったのとか、いいですよねー。
教科書にトイぺ騒動のことが出てたんですね。私は体験派だけど、困ったわというより、「何でトイぺだけ不足?」と不思議に思ったものです。そう、今、非水が生きてたら、何をどのように風刺して描くでしょうね。トランプのことかなぁ?

非水、「光」というタバコのパッケージですね。紺のパッケージの「ピース」とオレンジのパッケージの「光」、違いは値段。紺が高くてオレンジが安い、そんな2つの国民的ブランドだったと思います。

▲初夏さん、笑いとばしちゃうくらいパワーがあるから、絵も力強いですね。大勢人を登場させてパワー効果発揮という感じです。「米不足」、ありましたね!タイ米が輸入されて米不足をしのいだ年ですね。農産物の関税政策が上手くいかないと、またああいうことになるのかしら。



by TaekoLovesParis (2019-06-02 08:57) 

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